貴方は、緑多き豊かなエインドラ神国を治める神王の末姫。
神王と高名な魔術師の娘として生まれた貴方は、驚いたことに魔法が全く使えなかった。
エインドラ神国は信仰心の厚い国。その信仰心が起こす奇跡を、この国では「魔法」といった。
しかし、貴方は普通の人間でも使える魔法を使うことができなかったのだ。
腹違いの2人の兄弟を含め、貴方を「出来損ない」と宮廷内の人間は陰口を叩いた。
神事で父親である神王は留守が多く、心配をかけてはいけないと貴方は辛い胸の内を笑顔の向こうに閉じ込める。
早くに母を亡くした貴方は、いつも孤独だった。
小さな貴方は強くなりたい、誰かに必要とされたいと願った。そして、神王の勧めもあり10歳を過ぎた頃に王宮を出た。
向かった先は教育係に任命された、近衛騎士のヘクターの館。
貴方は彼によって、騎士として生きていくために必要な剣術や戦術を教えられた。
戦場で生き残るためにヘクターは時に厳しく、時に優しく貴方を導いた。
貴方よりも一回り以上年が離れたヘクターを、貴方は何時しか強く慕った。
けれど、ヘクターと貴方は年齢も違う。身分も違う。
彼は自分では釣り合わないと、貴方の気持ちを知りつつ固辞した。
――時は数年ほど流れ。貴方は成人し、力を磨いて一人前の騎士となった。
貴方は魔法を使うことはできなかったが、魔力に頼らずに、冥界から現れた不死者を単独で倒せるほどの剣の腕を持つ一流の騎士になっていた。
父であるエインドラ神王は、末娘である貴方の一人前の祝いにとヘクターは将軍に出世させる。
そして、ヘクターは苦笑いをしながら、弟子である貴方に求婚した。
初恋の成就に貴方は心より幸せを感じた。
そして、運命のあの日。神王とヘクターはウルスラ王国との国境の遺跡の調査に赴く。
何時までも戻らぬ神王を探しに行った主席神官騎士クリストフが発見したのは、惨殺された神王と近衛騎士達の遺体だけ、ヘクターの姿も遺体もそこにはなかった。
状況的に、ヘクターが神王を殺し、逃亡したことは明らかだった。
突然の神王の死により、2人の兄は仲違いを始め、エインドラ神国は内戦に突入してしまった。貴方は兄達の争いを止めようとしたが、逆に命を狙われ、クリストフに匿われることとなった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
それから1年。内戦に干渉する形でウルスラ王国は、エインドラ神国に不死者を率いて侵攻を始めたのだ。
荒廃する国。それでも民を護るため、貴方は戦場で戦う。そんな貴方の元に1通の手紙が届いた。
「今宵、月が空の頂点に来る頃。君を迎えに行くよ」
見覚えがある文字。その手紙の送り主が誰であるか。――貴方はもう、分かっていた。
ヘクター
30歳過ぎの元近衛騎士。今は敵国の王。
不死王(ノーライフキング)となり、貴方の元を訪れる。
元々の性格は、思慮深い苦労人。苦労しているからこそ明るく優しい人。
教育者としての才覚もあり、様々な人間が彼を慕っていた。
貴方の兄王子2人よりも王としての器を兼ね備えた人間であった。
現在は敵国の王として、不死者として。
貴方の不倶戴天の仇の存在となっている。
聖エインドラ王国の王位継承者。
魔力がなく、魔法を使うことができない。
その分、王族でありながら最前線で戦えるように努力を積み重ねた。
シナリオ | 皇里奈/草原 |
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イラスト | よくに(敬称略) |
価格 | 1000円+税 |
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