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その世界「アルカ」は、3つの世界に分けられていた。
しかし、神は突如その姿を消すことにより、3つの世界は融合を始めてしまう。
不安定になり、消滅の危機を迎えたこの世界のため。
天使長だった男は3つの世界を1つにし、楔となることで世界を消滅から救った。
1つの世界に天使と悪魔。そして、人間が住まう。
当然、食べ物から信条まですべてが異なる彼らが分かり合えるはずはない。
その世には争いが絶えず起こり、
神が姿を消してから2000年、争いが止むことがなかった。
しかし、争いは突如、終止符を打たれる。
それは突然の出来事だった。
それは青天の霹靂だった。
1人の女が、北の国に突然現れたのだ。
哨戒に当たっていた兵士が彼女に声をかけた瞬間、彼女は笑いかけたという。
「私(わたくし)は虚無。この世界を壊す者」
哨戒の兵士が彼女を捕えようとした瞬間、彼女は力を振るった。
その瞬間、世界に亀裂が入り、そこから真っ白な「虚無」が溢れ出したという。
かくして、その日からアルカと虚無との戦いが始まった。
虚無の女は空の彼方に浮かぶ城を作る。
それは硝子で作られた美しい城。
何の感情も持たない、様々な形の自動人形(オートマタ)に囲まれ、
女はその城から虚無を振りまく。世界はあっという間に追い詰められた。
追い詰められた北、中、南の国の代表者の前で、今まで迷いの森の奥で沈黙を守っていた賢者ヴァルミロスは姿を現して言った。
「半年前に鹵獲した自動人形(オートマタ)を元に、私は自動人形(オートマタ)を作りました。彼女と共に、最後の戦いを仕掛けます。各国から最強の勇士をお借りしたい」
ヴァルミロスが手を叩くと、そこに現れたのは少女の形をした自動人形(オートマタ)。華奢な体にまとうのは白と銀の舞台衣装の様な衣服。見た目だけなら、彼女が戦えるとは到底思えなかった。
しかし、誰もヴァルミロスの言葉に異論を唱えるものはいなかった。
彼女から溢れるのは膨大な魔力。それも、ヴァルミロスによく似た魔力だったからだ。
「彼女は属性を変えられる。体内に注がれた力を一時的に、自分のモノとすることができる。交わる対象が変われば、その力の質は変わる。彼女を使って、攻略します」
倫理に拘っていることは、3国にはできなかった。
手段を選んでいることは、3国にはできなかった。
北の国からは、魔王が。
中の国からは、傭兵王が。
南の国からは、法皇が手を上げる。
かくして、4人の英雄と共に賢者に作られた自動人形(オートマタ)は硝子の城に挑んだ。
*********
自動人形(オートマタ)は、よく働いた。
半年もの長い旅の中で、言葉1つ知らなかった彼女は、人と同じ感情を手に入れた。
話すことができなかった彼女だったが、言葉の代わりに様々な表情で英雄に寄り添った。
4人の英雄は自分達が目的のために彼女を抱くことを後ろめたく思いながら、
彼女を抱き、そして虚無に挑んだ。
そして、5人は虚無の女を見事に打ち滅ぼした。
死の間際、虚無の女は言う。
「私が死んでもこの世界は救われません。壊れた世界は直りませんから。世界はすでに死んでいるのですから。虚無に食われ、徐々に滅び世界で、絶望なさい」
女の言う通り、硝子の城が壊れても世界は変わらなかった。
虚無は少しずつ広がり、世界は、命は食われていく。
世界は再生することなく、ゆっくりと徐々に世界は壊れていく。
立ち竦む4人の前で、目を閉じていた貴方――自動人形(オートマタ)は口を開く。
美しい声で。
貴方は生まれて、初めて口にする言葉で、こういった。
「皆さん、私と一緒に死んでいただけますか?」
柔らかな笑みを称え、貴方はそう――口にした。
賢者ヴァルミロス
北・中・南のどこの国にも属さない、古よりいると言われる賢者。
迷いの森の中にある広大な図書館の様な館に住むが、
招かれた客以外は館に入ることは許されない。
よって、この数百年、外の世界に姿を現すことはなかった。
虚無がこの世界に侵攻をはじめ、早い段階で硝子の塔に侵入。
このままでは勝てないと踏み、自動人形(オートマタ)の作成に手を付けた。
貴方の産みの親であり、貴方の初めての男。
世界を救うためにヴァルミロスによって作られた自動人形(オートマタ)。
注がれた精から力を得て、属性を変え、世界を救うために戦う戦闘機械。
シナリオ | 皇里奈 |
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イラスト | 蒼糸aoito(敬称略) |
価格 | 1100円+税 |
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